ホルムズ海峡封鎖、1973年石油危機が今まさに繰り返されている
ホルムズ海峡封鎖、1973年石油危機が今まさに繰り返されている
イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を封鎖した。世界の石油供給の20%が一夜にして消えた。ブレント原油は100ドルを突破し、イランは200ドルの原油価格を警告している。この既視感は偶然ではない。
ペルシャ湾で何が起きているのか
「ホルムズ海峡を一滴の石油も通過させない」
イラン革命防衛隊のこの公式宣言が、世界のエネルギー市場を揺るがしている。ホルムズ海峡は世界で生産される原油の5バレルに1バレルが通過する要衝だ。その流れが遮断された。
現在、ペルシャ湾には約1,000隻のタンカーが足止めされている。海峡の入り口には船が何重にも滞留し、誰も通過する勇気がない。海峡の内側は空っぽだ。これは異常事態である。
背景:空爆とイランの報復
昨年6月、米国とイスラエルがイランの核施設に対する合同空爆を実施した。米国防総省はイランの核開発を2年後退させたと評価した。しかしイランはすべてを再建したと主張し、外務大臣は防衛態勢の完了を宣言した。
そしてイランの切り札が出た。核兵器ではなく、石油だった。
ホルムズ海峡封鎖はイランが行使できる最も強力な経済的武器だ。ドローン数機に簡易爆弾を搭載するだけで、石油の流れを深刻に妨害できる。通常戦闘なしに世界経済を揺るがす非対称戦略であり、実際に機能している。
1973年の亡霊
ここで歴史が不気味なほど重なる。
1973年10月、ヨム・キプール戦争が勃発。米国がイスラエルを支援すると、サウジアラビアをはじめとするアラブOPEC諸国は、米国が全く予想していなかった武器を繰り出した。石油輸出禁止だ。
原油価格はバレル3ドルから12ドルへ4倍に跳ね上がった。全米のガソリンスタンドに「燃料切れ、閉店」の看板が並んだ。一度に10ガロンしか給油できず、米国人は何時間も列に並んだ。生活費は8%急騰し、食料品価格は19%上昇。5万6,000人が解雇され、各都市は省エネのために街灯を消した。
ウォーターゲート事件の対応にも追われていたニクソン大統領は、ホワイトハウスのクリスマスツリーの照明を通常の20%だけ点灯した。
投資家に起きた本当の災厄
1973年の株式暴落は大恐慌以来最悪の一つだった。ダウは45%下落。退職資金の半分が消えた。ロンドン市場は73%の価値を失い、香港も暴落した。
最も衝撃的な事実がある。インフレ調整後の実質ベースで、米国株式市場が1973年の水準を回復したのは1993年だった。20年かかった。45歳で暴落に遭い65歳での引退を計画していたなら、20年かけてようやく元の位置に戻っただけだ。
1973年と現在の比較
| 項目 | 1973年 | 現在 |
|---|---|---|
| 引き金 | OPECの石油禁輸(米国のイスラエル支援への報復) | イランのホルムズ封鎖(米・イスラエルの空爆への報復) |
| 原油価格 | $3 → $12(4倍) | $100突破、$200の警告 |
| インフレ | 8〜14%に上昇 | 2.4% → 3.5%以上の見通し |
| 核心パターン | 中東紛争 → 石油の武器化 → 西側経済打撃 | 同一 |
米国は1973年よりはるかに大きな石油生産国になった。パーセンテージのショックは異なるだろう。しかしメカニズムは同じだ。原油が上がれば肥料が上がり、食料が上がり、輸送費が上がり、すべてが上がる。
緊急備蓄放出は解決策になるか
国際エネルギー機関(IEA)は史上最大規模の4億バレルの緊急備蓄原油放出を提案した。米国も戦略石油備蓄(SPR)から1億7,200万バレルを放出している。公式見解は「備蓄が市場を安定させる」というものだ。
率直に言えば、これは緊急貯蓄口座を市場に投入し、危機が早く終わることを祈っているに過ぎない。
市場は解決策と応急処置の違いを知っている。ホルムズ海峡が開通しない限り、根本的な供給問題は解消されない。核交渉は完全に決裂し、双方とも譲歩の気配はない。
今後の注目点
エコノミストたちは、原油が100ドル以上を維持した場合、インフレが3.5%以上に再燃すると予測している。これが意味するのは明白だ。期待されていた利下げはなくなる。テック株、フィンテック、バイオ、AI関連銘柄すべてが、金利高止まり環境からの圧力を受ける。
1973年の教訓はシンプルだ。エネルギー危機が始まると、その影響は誰もが予想するよりはるかに広く、深く、長く続く。そしてほとんどの人は気づくのが遅すぎる。
ホルムズ海峡で起きていることは1973年の繰り返しではないかもしれない。しかし韻は合っている。マーク・トウェインが言ったように、歴史は繰り返さないが韻を踏む。ポートフォリオを見直す時だ。
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