インテル151%ラリー、ターンアラウンドはすでに価格に織り込まれたか
インテル151%ラリー、ターンアラウンドはすでに価格に織り込まれたか
インテル、25年ぶりに2000年高値を超えた
インテルは今年151%上昇した。私が見ている5つの半導体株のうち最大の上昇率だ。1年前に19ドル付近だった株が98ドルを超えた。2000年のドットコム期高値をやっと抜けたという事実そのものが、この銘柄がどれほど長く横ばいだったかを物語っている。
私はインテルを保有しているが、この上昇に対する手柄は一切主張しない。市場が投票した結果であって、私の判断で動いたわけではない。だから正直に問わなければならない。この会社は1年前の5倍良くなったのか、それとも1年前が単に倒産価格まで売られすぎていたのか?
何が動いたか:信任票 + 直近四半期
二つのことが同時に起きた。
第一に、外部からの信任票。米政府が110億ドルの出資、エヌビディアが別途50億ドルを投入。「米国本土ファウンドリ」という政策ナラティブと噛み合っている。
第二に、より重要なのが直近の決算だ。
- 売上+7%成長
- 大幅な利益サプライズ
- 粗利益率41.5%(前年35%から大幅改善)
- 発表翌日に株価+20%
粗利益率は、追加で1単位売ったときに残る利益率。販管費や税金を引く前の数字だ。これを1四半期で6ポイント以上動かすのは簡単ではない。ターンアラウンドが実体として動き始めた最初の証拠と言える。
それでも8ピラーは×が8つ
問題は過去5年の数字だ。
- TTM フリーキャッシュフロー:約-30億ドル
- 5年平均FCF:-77億ドル
- 時価総額:約5,000億ドル
- 売上:540億ドル → PSR約9倍
エブリシングマネー流の8ピラーで、インテルは×8つ。めったに見ない数字だ。それでも「買うな」と切り捨てられないのは、これが最初からターンアラウンド・ベットだからだ。8ピラーは「今どれほど壊れているか」を測るもので、「これから何になるか」を測るものではない。
価格が変われば論理も変えなければならない
これが今日一番伝えたいポイントだ。
株価17ドル時代のインテルを見る目と、98ドルの今を見る目は同じであってはいけない。アナリストの2030年EPSコンセンサスは約4ドル。
- 17ドル / 4ドル ≈ PER4倍
- 98ドル / 4ドル ≈ PER25倍
同じ会社、同じ業績予想で、価格だけが6倍になった。1年前、買収シナリオが語られていた水準なら計算は合う。98ドルの今は「ターンアラウンドが完璧に進む」前提でようやく正当化される。
私が回したシナリオ
ストックアナライザーに10年想定を入れた。
| シナリオ | 売上成長 | FCFマージン | 適用PER |
|---|---|---|---|
| 弱気 | 5% | 8% | 13 |
| 中立 | 8% | 17% | 18 |
| 強気 | 11% | 25% | 23 |
結果は下限14ドル、中央値45ドル、上限99ドル。現在価格98ドルは事実上「強気シナリオ」に張り付いている。
強気シナリオのFCFマージン25%でさえ、エヌビディアの50%超より大きく低い。つまりインテルにエヌビディア級を要求しているのではなく、「過去の自分の半分程度」を要求しているのに、価格はすでにほぼ織り込まれているということだ。
私の結論
インテルは会社としては確かに改善している。粗利41.5%、政府とエヌビディアの資本、政策の追い風 ── 全部本物だ。しかし「良くなる会社」と「良い投資」は別の問いだ。
17ドルのインテルと98ドルのインテルに同じ論理を当てるのは間違いだ。1年前なら積極的に買うべきだと言っただろう。今はターンアラウンドが綺麗に進んでようやく9%のリターン、という価格だ。安全余裕はほぼ残っていない。
関連記事:エヌビディアのバリュエーション、本当にバリュー株候補か、AMD・マイクロン・マーベル、3銘柄の適正価格チェック
FAQ
Q: 政府とエヌビディアが投資したのだから、買っていいのでは? A: 倒産リスクを下げる効果は確かにある。しかし彼らの取得平均価格と、あなたが今買う98ドルは違う。同じ資産でも価格が6倍違えば、期待リターンはまったく別物になる。
Q: 粗利率41.5%が維持されれば? A: 維持では足りない。エヌビディアは71%。インテルは50%後半まで戻して、ようやく強気シナリオが機能する。1四半期良かっただけではトレンドと呼べない。
Q: では既存保有者はどうするか? A: 取得単価次第だ。20ドル台で買っていれば一部利確は合理的。98ドルで新規参入する場合、それは「ターンアラウンドが順調に進む」シナリオへのベットであり、もはや安全余裕付きのバリュー投資ではない。
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