金・銀の強制売却が生んだ買い場 — トルコ58トン売却と70年ぶりの売却圧力
金・銀の強制売却が生んだ買い場 — トルコ58トン売却と70年ぶりの売却圧力
トルコが2週間で金58トンを売却した。同期間に世界中の金ETFから流出した量(43トン)を上回る規模だ。
これは「利益確定」ではない。イラン戦争で原油価格が急騰し、エネルギー輸入コストを賄えなくなった国々がドル確保のために金を強制的に処分している状況だ。インドも純売却に転じた。湾岸の政府系ファンドはロンドンの金庫から静かに金を引き出している。LBMAデータによると、ロンドンだけで45トンの純流出が確認されているが、公式な売却報告はほとんどない。
約70年ぶりの売却圧力だ。しかし、私はこの状況がむしろチャンスだと考えている。
強制売却のメカニズムを理解する必要がある
結論から言えば、今金を売っている主体は金への信頼を失ったから売っているのではない。今すぐドルが必要だから売っているのだ。
トルコを例に挙げると、石油の90%、天然ガスの98%を輸入に依存している。原油が1バレル10ドル上昇するたびに年間40〜50億ドルの追加コストが発生する。イラン戦争で原油が約50ドル上昇した状況で、年間200億ドル以上の追加エネルギーコストがトルコにのしかかった。
選択肢は3つ、いずれも厳しいものだった。
通貨価値を放置すればリラが暴落し、輸入物価の急騰で国民生活が直撃される。ドル外貨準備を使い切れば為替危機が現実になる。結局、金を売ってドルに換える3番目の道を選んだ。ロンドンのイングランド銀行に保管された金を金・外貨スワップで処分したのだ。
湾岸諸国も同じ状況だ。サウジのドルペッグ(1ドル=3.75リヤル)を維持するにはドルが継続的に流入する必要があるが、ホルムズ海峡危機で石油輸出に支障が出てドル流入が減った。金を売ってでもドルを補填するしかない。
長期の構造が変わっていない点が重要だ
これらの国が金を売ったからといって、金の構造的価値が消えたわけではない。
主要投資銀行の金価格目標は依然として1オンス5,000〜8,000ドルの範囲にある。中央銀行の95%が今後の金購入拡大を計画していると回答した。米国の38兆ドルの債務はドル価値に長期的な下落圧力を与える。脱ドル化の流れ自体が消えたわけでもない。
今起きているのは、一時的な流動性危機が生み出した割引期間だ。戦争が終わりエネルギーコストが正常化すれば、今金を売っている国々が再び買い手として戻る可能性が高い。湾岸諸国は石油・ガス輸出でいずれドルを稼ぎ、そのドルで再び金を購入するだろう。
銀にはさらなる投資根拠がある
銀は金より変動が大きいが、投資需要と産業需要の両方を同時に持っている。
投資面では金と同じロジックが当てはまる。強制売却による一時的な過小評価だ。しかし産業面では、すでに供給が需要に追いついていない。太陽光パネル、電子機器、医療機器に使われる銀の需要は、製造業サイクルに関係なく構造的に増加している。
金も銀も新規鉱山の開発は進んでいない。現物を購入しようとすると配送まで数週間かかる状況だ。供給不足は構造的であり、強制売却が終われば価格は本来の水準に戻る可能性が高い。
リスクは明確だ
強制売却がいつ終わるかは誰にもわからない。戦争が長期化すれば、トルコ、インド、湾岸諸国の売却が続く可能性がある。ロシアが4月から金の輸出を事実上禁止するため、期限前に追加の売り圧力が生じる可能性もある。中国も金の購入を一時停止した状態だ。
短期的にさらなる下落の可能性は残っている。「底値を拾う」という発想より、分割購入のアプローチが現実的だ。
しかしこれは構造的価値が毀損された下落ではなく、流動性ニーズによる強制清算だ。この区別が投資判断において最も重要なポイントだ。
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