オラクル株は半値、受注残は6,380億ドル ― 360億ドルのキャッシュフロー反転をどう読むか
オラクル株は半値、受注残は6,380億ドル ― 360億ドルのキャッシュフロー反転をどう読むか
株価は半値になったのに、事業はむしろ大きくなっている
先に私の結論を言うと、オラクルで壊れたのは事業ではなく、キャッシュのタイミングです。売上高は17%増えて670億ドルになり、署名済みの受注残は1年で363%増えて6,380億ドルになりました。株価を半値にしたのは、その成長を生むために先に出ていくお金です。
昨年9月、オラクルは市場で最も熱い銘柄の一つでした。1年で2倍以上に上昇し、1株279ドル近辺まで到達しています。そして今は、その半分です。
これだけの下落幅は通常、どこかが壊れたことを意味します。ですから私も財務諸表を最初から見直しました。ところが、壊れた場所が見当たりません。
オラクルがこのサイクルで実際に売っているもの
オラクルは、オープンAIのようなAIラボがモデルを学習させる際に使う計算能力そのものを貸す会社です。クラウド部門のOCIを通じてデータセンターを建設し、GPU容量をリースしています。
ここでのオラクルの強みは技術ではなく、立ち位置です。中立であること。
巨大な計算資源を必要としながら、アマゾンやグーグルのような直接の競合からそれを借りたくない企業があります。自社のワークロードをライバルのインフラ上で回したくないからです。彼らに残る選択肢がオラクルになります。さらにオラクルは、クラウドを汎用ではなくAI学習向けに設計しました。同じ学習を、古い汎用クラウドより速く安く回せる構造です。私はこの中立性と専用設計の組み合わせが、市場が織り込んでいるよりも長持ちする堀だと考えています。
市場を本当に驚かせた数字
問題は、そのデータセンターの建設費でした。
オラクルの設備投資は4年間で1,100%超も増え、ほぼ560億ドルに達しました。その結果、フリーキャッシュフローはプラス120億ドルからマイナス240億ドル近くへと反転しています。360億ドルの振れ幅です。
数字だけを見れば恐ろしいグラフです。稼いでいた会社が、突然お金を燃やす会社に見えるからです。私もこの形を見たら、まず警戒します。AI設備投資が回収されないリスクについてはAI設備投資の崖と集中リスクで別途扱いました。
ただしこの支出は、すでに売れたものに対する支出です
ここが肝心です。オラクルは需要を期待して建てているのではなく、すでに署名済みの契約を履行するために建てています。
受注残は1年で363%増えて6,380億ドルになりました。昨年1年間の全売上高の約10倍です。つまり今の設備投資は、投機というより納品準備に近い。
この受注残が売上として認識され始めると、絵が変わります。現在670億ドルの売上高は、3年以内に1,400億ドル近くまで伸びる可能性があります。そして建設支出がピークを越えるにつれ、フリーキャッシュフローは今後2年以内にプラスへ戻る道筋が見えています。
市場は今、支出サイクルの最悪の局面だけを見て値付けをしており、その支出が何のためのものかはまだ価格に入れていません。ここで買う人が引き受けているのは、事業の失敗リスクではなく、この時間差です。
私が見る本当のリスク
もちろん、この論理には条件が付きます。
第一に、契約相手の集中度です。受注残は大きいほど良いのですが、それが少数のAIラボに偏っているなら、そのラボの資金調達能力がそのままオラクルの売上になります。私はここが、現在のオラクルで最も過小評価されているリスクだと考えています。
第二に、負債です。マイナス240億ドルのフリーキャッシュフローはどこかで賄わなければなりません。調達コストが上がれば、受注残の実質的な利益率はその分削られます。
第三に、時間差そのものです。受注残が売上に変わるまでの間、株価はいくらでも下がり得ます。割安という判断は、底という意味ではありません。
それでも私は、オラクルを割安圏だと見ています。6,380億ドルは希望的な見通しではなく契約であり、市場は今それをほとんど値付けせずに手放しています。この構造がなぜ通行料ビジネスに近いのかはAIインフラの通行料モデルで詳しく書きました。
FAQ
Q: フリーキャッシュフローがマイナスの企業を買っても大丈夫ですか。 A: そのマイナスの原因次第です。事業の劣化で漏れ出しているお金なら危険信号ですが、すでに署名済みの契約を履行するために先に出ていくお金なら性質がまったく違います。オラクルの場合、6,380億ドルの受注残がその支出の裏付けです。
Q: 株価が半値になったのは、市場が何かを知っているからでは。 A: 市場が先に織り込むのは、たいてい方向ではなくタイミングです。売上高はなお17%成長し、受注残は363%増えています。価格に入っているのは需要の崩壊ではなく、キャッシュフローがマイナスの期間がどれだけ長引くかという不確実性です。
Q: いつ頃キャッシュフローは正常化しますか。 A: 現在の建設サイクルを前提にすれば、今後2年以内にフリーキャッシュフローがプラスへ転じる可能性は十分あります。ただし受注が伸び続ければ、支出のピークも一緒に後ろへずれる点は織り込むべきです。
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